ニューイヤー駅伝までまもなく! 2022年を振り返ると、元旦に準優勝。さらに11人もの選手が自己ベストを更新しました。 快進撃の秘密を、3人のコーチに聞きました。
左から、本川一美コーチ、阿久津圭司コーチ、小林光二コーチ
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【コーチ紹介】
本川一美(ほんかわ・かずみ)コーチ 今春、他チームから移籍。現役時代はダイエーで奥谷亘監督とチームメートだった。1995年ニューイヤー駅伝1区区間賞。
阿久津圭司(あくつ・けいじ)コーチ 2021年シーズンからコーチ。現役時代はニューイヤー駅伝で1区を走ることが多く、背筋の通った華麗な走りで沿道のファンを沸かせた。
小林光二(こばやし・こうじ)コーチ 2021年シーズンからコーチ。現役時代はマラソンで活躍し、2014年のシカゴマラソンでは日本人トップでフィニッシュした。
本川コーチが驚いたこと
本川コーチ SUBARUはニューイヤー2022で準優勝と、大躍進したチーム。思い切り勢いに乗っているので、どんなことをやっているのか興味津々でした。で、実際入ってみたら驚きました。
今季、移籍加入し、奥谷監督を支える本川一美コーチ
僕は奥谷亘監督と現役時代にチームメートでしたが、彼は、とんでもない量の練習をする、量から攻める選手でした。それで世界で戦える結果を出していた。
だから、SUBARUでも、自分に課したように厳しく、思い切り量をやらせているとばかり思っていたら、練習内容を、選手に任せるやり方だった。意外でしたね。
阿久津コーチ 確かに2年前まではそうでした。ですが、SUBARUは2020年の東日本実業団駅伝で予選落ちし、ニューイヤー2021に出られないという辛い経験をしました。その時にチームの方針がガラリと変わり、練習を選手に任せる方針になったんです。
小林コーチ 自分で考えた練習なら、結果も自分の責任です。大変なはずですが、新しい方針になって、選手はみんなウキウキしていました。
一生懸命調べて、意図をもって練習するようになったし、結果が出なかったら率先して練習内容を見直したりと、自律的にやるようになった。
自律的な社員をめざすというのは、SUBARUの会社全体の方針でもあり、いまの陸上部は会社の方針ともぴったり一致しています。
阿久津コーチ 監督と僕たちは、コーチングに徹しています。普段は選手をしっかり見ておいて、個別面談の時などに相談を受けたら、きめ細かく応えられるようにしています。
本川コーチ 選手が生き生きしているし、結果も出ているしで、いい方向に進んでいるね。
秋以降、調子上がる
阿久津コーチ 前回のニューイヤーで準優勝したことでSUBARUへの注目度も上がり、今季のはじめは選手たちに強いプレッシャーがありました。気合いが入りすぎて、空回りして結果が出ない選手もいました。
選手の動きをしっかり観察し、的確に助言する阿久津圭司コーチ
落ち着きが必要と気づき、秋にクールダウンできた。僕はこのあと、選手たちの状態がとても良くなったと思います。
小林コーチ そうですね。11月3日のニューイヤーへの予選、「東日本実業団駅伝」でも、2区のベンソン選手と、3区の照井明人選手が区間賞を獲りました。
阿久津コーチ 一足早く準備ができてきた照井選手、ベンソン選手の2人はしっかり区間賞。 ただ、秋に選手たちの調子が良くなってきた直後で、全員が結果をそろえられなくてチームとしては7位だった。改めて、勝負は甘くはないことを再認識できて、選手たちは気を引き締め直していました。
1月1日に向けて、ほかの選手も準備が整ってきたので、ニューイヤー駅伝ではいい走りをしてくれるでしょう。
前回より相当上がった、選手の実力
小林コーチ 今季は、10000mで清水歓太選手が当時日本歴代7位となる27分31秒27の記録をたたき出したし、口町亮選手もハーフマラソンで1時間01分46秒のSUBARU歴代2位のタイムで走った。川田裕也選手も10000mの自己ベストが27分台。 準優勝した前回に比べても、選手の実力は相当、上がっています。
選手に寄り添い、温かく助言する小林光二コーチ
本川コーチ 11月26日の記録会「八王子ロングディスタンス」の10000mで、梶谷瑠哉選手と鈴木勝彦選手が20秒以上も自己ベストを更新。阿久津コーチの指摘どおりで、猛練習を積み、秋にいったんクールダウンした結果が出てきた。
梶谷選手も鈴木選手も、レースの途中で力をためられて、最後までしっかり粘る理想の走り方ができていた。ためるべき時にため、勝負どころで食らいつく。この感覚を得られた意義は大きく、ニューイヤー駅伝につながるでしょう。
小林コーチ あとベンソン選手はやっぱり強い。八王子ロングディスタンスでも、初めての10000mで27分9秒83で、いきなり世界選手権参加標準記録(27分10秒00)を突破。予想されていたこととは言え、本当に強い。
阿久津コーチ まったく驚かなかったよね。26分台が出ても、おかしくなかった。
本川コーチ ベンソン選手は初めての10000mで、力試しの位置づけだったから、力を出し切ってなかったよね。それであの記録。ニューイヤーに向けて期待しかない。
個々の強み生かす、出走オーダーに期待してください!
小林コーチ 今回は、前回にくらべても選手層が厚い。
日本代表クラスに成長してきた清水歓太選手、絶好調の照井明人選手を中心に、主力は走れて当然、という仕上がりを見せている。
前回のニューイヤーを走っていないメンバーでは、10000mで27分台の記録を持つ川田裕也選手、強烈なスピードがある森田佳祐選手の影響も楽しみです。
阿久津コーチ 小山司選手は調整力が高く、ニューイヤーに向けてしっかり合わせてくる。口町亮選手も上り調子。梶谷選手、鈴木選手は八王子ロングディスタンスで見せた好調をしっかり維持している。
ニューイヤー駅伝では、勢いあるSUBARUに期待していてください。
本川コーチ 今のSUBARUには、いろんな強みを持った、異なるタイプの選手がいるのが大きい。前回5区で走った照井選手は、上り坂、向かい風が得意で、マインドが強い。その強みが、難コースかつ強風の吹き荒れた5区で生きて、より速いベストタイムを持つ選手に軒並み勝った。
前回のニューイヤー同様、個々の選手の強みを生かすことで、実力以上の結果を出せるはず。
どの選手をどこに持ってくるか。悩みどころですが、奥谷監督、コーチ陣の手腕も楽しみにしていてください。