新経営体制における方針

2023年8月2日、SUBARUは新経営体制における方針について発表しました。

自動車産業は100年に一度の大変革期にあると言われていますが、さらに非連続で従来以上にスピードのある変化が生まれています。その環境変化に対して、SUBARUがどのように対応していくのかをご紹介します。

中期経営ビジョン「STEP」の
取り組みと評価

2018年に策定した中期経営ビジョン「STEP」では、「安心と愉しさ」を不変の提供価値として、機能価値だけではなく情緒価値を含めたSUBARUらしさを追求し、「笑顔をつくる会社」をありたい姿として掲げました。

この目指すべき方向は、新経営体制としても変わることはありません。

中期経営ビジョン「STEP」では品質改革を一丁目一番地と定め、社員一人ひとりへの品質意識を徹底する活動や、品質に関わる組織体制の強化を推進した結果、着実に成果が表れてきています。

また、お客様に認められる「SUBARUらしさ」をより高めるため、カーボンニュートラル実現に向けた取り組みや、提供価値である「安心と愉しさ」の具現化に向け、SUBARUづくりを刷新し、モノづくり革新を進めてきました。

こうした取り組みの成果は、 ACSI米国顧客満足度指数やIIHSトップセイフティピックプラスをはじめとする、お客様や評価機関からの、商品や性能に対する評価にはとどまりません。

米国販売子会社 Subaru of America, inc.(以下、SOA)での「Subaru Love Promise」の取り組みを通じた社会貢献活動が高く評価され、米経済誌フォーブスが発表した「ソーシャルインパクトをもたらす米国のベストブランド」ランキングにおける、自動車ブランドの中での1位獲得、米ニュースサイトのアクシオスと調査会社のハリスポールが共同で行った「レピュテーションランキング」での3年連続の上位選出など、企業・ブランドとしての高い評価にもつながりました。

このような評価は、中期経営ビジョン「STEP」の取り組みが正しい方向に進んできたことの証であると同時に、SUBARUの大切な財産であると捉えています。

2030年の絵姿

一方、自動車産業が100年に一度の大変革期を迎えると言われ始めてから時間が経ちますが、ここ最近での非連続な変化やそのスピード感は従来以上のものと捉えています。例えば、当社の主力市場である米国における急速なバッテリーEVの浸透、異業種も含めた新興メーカーの台頭などです。

こうした事業を取り巻く環境の大きな変化に対し、SUBARUがどのように対応していくのか、「電動化計画のアップデート」と「2028年に向けた決意」という視点でご紹介します。

電動化計画のアップデート

従来公表の2030年時点での電動車比率は、ハイブリッド車とバッテリーEVを合わせて「40%以上」としていました。

今回、2030年の電動車販売比率を「バッテリーEVのみで50%」へ引き上げ、120万台の全世界販売台数に対して「60万台のバッテリーEVを販売することによって実現する」という目標に大きく見直します。

その電動車販売を支える生産体制については、2023年5月に日本国内工場のバッテリーEV生産キャパシティを20万台から40万台に増強すると発表しました。

今回、新たに米国においても、現在日本国内工場で生産予定のトヨタハイブリッドシステムを搭載した次世代e-BOXER車両およびバッテリーEVの生産を開始することとしました。

今回公表した米国でのバッテリーEV生産ラインを加え、全世界の工場生産キャパシティは120万台レベルを持つこととなります。

電動化への過渡期においては、自動車に対する環境規制やマーケットの動向を注視しながら、日米工場の生産体制再編を活用して柔軟に対応し、ある程度方向性が見えてきた段階で一気に拡張していくという「柔軟性と拡張性」の視点で、先行きの見えない困難な時代を乗り切っていきたいと考えています。

2028年に向けた決意

2030年に向けて、このように販売目標と生産体制の両面で電動化計画をアップデートします。そして、これらを実現する上で、SUBARUは2023年から2028年までの5年間を大変重要な期間と位置づけて、新経営体制の下で「モノづくり革新」と「価値づくり」の2つに強い決意をもって取り組みます。

内燃機関からバッテリーEVに代わっていくこの過渡期において、前述の国内・海外工場再編による「生産体制」の刷新を決断したタイミングに、「開発プロセス」や「商品企画」の刷新を合わせることで、この2つの取り組みを強力に推し進めます。

単に「モノづくり革新」と「価値づくり」の取り組みを進めるというレベルではなく、この大変革期にSUBARUが決して埋没することのないよう、「モノづくり」と「価値づくり」においては世界最先端でありたいと考えています。それを早期に実現するために、SUBARUという会社の舵をバッテリーEVに切り、経営資源をバッテリーEVに集中します。

SUBARUは過去、自らを“小回りの利く職人集団“と称し、「AWD(All-Wheel Drive:全輪駆動)」や「アイサイト」といった様々な技術を送り出してきました。

時代の変遷とともに、お客様の嗜好の変化やクルマの複雑化などにより、対応領域は多岐に渡り、個々の領域の専門化、またお取引先様への業務委託も含めて、製造・開発・サプライチェーンを中心に分業化が一気に進みました。

一方で、100年に一度の大変革期においては、これまで競ってきた同業他社のみならず、異業種のまったく新しい価値観を持った企業と競い、凌駕していかなければ生き残れない状況を迎えています。

「モノづくり革新」を通じて、小回りの利くSUBARUの規模だからこそできる製造・開発・サプライチェーンが一体となった“ひとつのSUBARU化“を進めることで、高密度なモノづくりを推進していきます。

こうした考え方を軸に、SUBARUは、開発日数半減、部品点数半減、生産工程半減を実現し、世界最先端のモノづくりを成し遂げます。

現在は商品構想、設計、生産などが、それぞれ前工程の手離れを待ってリレー式に進めている業務を、モノづくり革新の中では、各領域をアジャイルに進めていくことで、モノづくりに要する時間の半減に繋げます。

また、こういった取り組みを絶え間なく推進していくことで、既存領域にかかる開発日数、生産工程などの抑制を図り、先行きの見えない時代における「非連続に変化する領域」への対応力も強化していきます。

SUBARUはお客様の人生に寄り添うクルマづくりをしてきました。そのクルマたちが、お客様との想い出を作り、米国ではお客様の心の中でLoveという言葉が生まれています。

そのLoveをもっと拡げたいという想いが、米国の販売子会社SOAと全米の販売店が一体となって行っている「Love Promise」という活動として実を結んでいます。

SUBARUの商品を核として、お客様、販売店、SUBARU、そして地域社会の人と人を強固に繋げるこの取り組みこそが、SUBARUの「社会と未来への価値貢献」であり、これを守り、さらに取り組みの輪を拡げていきます。

こういった取り組みを拡げていこうという私たちSUBARUの想いは、この先の大変革期や電動化時代となっても決して変わるものではありません。お客様、販売店、そして私たちSUBARUの繋がりの中心にある「商品」において、その価値をさらに進化させていきます。

バッテリーEV時代の「価値づくり」においてまず重要となるのが、SUBARUの提供価値である「安心と愉しさ」の更なる進化です。

「バッテリーEV時代においては、SUBARUらしさが失われるのではないか?」という問いを受けることがあります。

その問いに対する1つの答えですが、我々が長年培ってきたAWD性能は、バッテリーEV化により内燃機関を用いた車よりもさらに緻密な制御を可能にし、「安全・安心」という強みを更に強化することができると考えています。

またバッテリーEV時代に特有の「シームレス」や「ストレスフリー」といった使い勝手の追求や、クルマの魅力を減らすことなく、長くお付き合いいただきたいという考えに基づく「減価ゼロ」の発想など、バッテリーEVの時代においても、SUBARUはテクノロジーで、お客様の期待に応えていきます。

こういった商品や機能を核とし、お客様側では「安心」「挑戦」「いつでも新しい」といった「SUBARUとともに過ごすことでの色褪せない情緒的な価値」を感じていただけると考えています。

電動化が進むことによって、「今まで以上にお客様の人生の寄り添うSUBARU」を目指していきます。

この「モノづくり革新」「価値づくり」へのチャレンジを「2028年までの今後5年間でやりきる」ことが新経営体制の決意です。

2028年までに世界最先端の「モノづくり」を進め、企業の競争力を引き上げます。同時に「価値づくり」においても世界最先端の競争力のあるバッテリーEVとしてお客様に提供します。

2028年末までにバッテリーEVを4車種追加し、2026年末までに投入することを公表済みの4車種に加えて、合計8車種のバッテリーEVをラインアップします。これにより、米国でのバッテリーEV販売 40万台を狙います。

変革を支える人と組織づくり

「モノづくり革新」「価値づくり」の原動力となるのは、やはり“ヒト” “人財”であると、私たちSUBARUは確信しています。その人財を育てていくこと、これこそが企業競争力の源泉であり、最も力を入れていきたいところです。

具体的には、中期経営ビジョン「STEP」から重点的に取り組む「個の成長」に焦点を当てた活動を着実に進めていきます。

そして「個の成長」の先にある“変革をリードする人財”を育む風土を醸成し、そうした人材が活躍できる場を作ることも新経営体制の使命です。

変革をリードする人財が部門を横断して活躍し、社内外で仲間を増やして新たな時代のスタンダードとなるプロセスや技術を生み出していきます。

財務・資本政策

自己資本比率50%以上といった財務健全性、時々に応じたレベルのネットキャッシュポジションを意識した財務安定性を維持しつつ、
電動化時代に勝ち残るための積極的な成長投資を実行します。

具体的には今回発表の生産、開発に対する電動化投資額は、2030年頃までに累計で約1兆5,000億円を見込んでいます。

同時に「資本効率向上をより意識した株主還元」を実施します。

また、前段で触れた「モノづくり革新」「価値づくり」の各種取り組みを推し進め、中期経営ビジョン「STEP」にて掲げた「業界高位の収益力」は不変のゴールと位置付けます。


関係資料

2023年8月2日公表 「新体制による方針説明」

2023年5月11日公表 「電動化計画の現状」

2022年5月12日公表 「国内生産体制再編計画について」