SUBARUらしさの継承・進化
~未来を担うエンジニアの活躍~

「乗って」「感じて」「考えて」「物理にする」エンジニアの育成 スバルドライビングアカデミー

SUBARUには、専任のテストドライバーはおらず、開発段階でクルマを評価するのはすべて「エンジニア」です。お客様に喜んでいただける商品となるよう、実際に運転しながら「安心感や愉しさといった数値で表しにくい官能領域」をエンジニア自身が感じ取り、理論的に思考したうえで設計図面に落とし込みます。
「乗って」「感じて」「考えて」「物理にする」――この行程を分業せず、同じエンジニアが一貫して取り組んでいるところにSUBARUの強みがあり、その能力をさらに磨き、より良いクルマづくりにつなげるために「スバルドライビングアカデミー」(以下、SDA)があります。

SUBARUは「ドライバーの評価能力以上のクルマはつくれない」と考えています。一方、開発現場ではドライバーが乗って感じた感覚的な違いは明らかでも、従来の計測方法では数値に表れないという現象が頻繁に起こります。

SDAでは、トレーニングを通じて運転スキルを高め、違いを感じる感覚を研ぎ澄ましたエンジニアを輩出しています。彼らがその違いを発生させているメカニズムを深く追究することで、「乗って安心、愉しい」と感じる要素を数値化できる領域がハードのみならず制御ソフトにおいても増えていきます。それらを開発に織り込むことで、車種やパワーユニットを問わず「SUBARUらしい」と感じていただけるクルマに仕上げています。


SUBARUらしいクルマづくりを実現し続けるために、このようなエンジニアの人財育成に力を入れています。SDAのメンバーは、開発部門の様々な部署から集まっています。SDAで最上級の運転スキルの習得を通じて、評価能力とマネジメント力を高め、組織の壁を越えたクルマづくりに取り組んでいます。

SUBARUがお客様に提供する価値は、「安心と愉しさ」です。「乗って安心、愉しい」と感じていただけるSUBARUらしいクルマづくりを追求し、それに共感してくださるお客様との関係性をより一層強くしていくことで、持続的な成長とさらなる企業価値の向上が実現できると考えています。

SDAが始まった2015年に、第1期生として参加しました。それ以前もSUBARUにはテストコースを走るライセンスを取得するための講習はありましたが、運転スキルや評価能力を高めるための体系立てられたトレーニングが必要だと感じており、SDA設立の話を聞いた際は真っ先に立候補しました。

現在はインストラクターとして、人財育成やトレーニングプログラムの企画・運営に携わっています。クルマの動きを感じ取るポイントは人それぞれ違うため、トレーニングではインストラクターが同乗し、その人の感じ方をしっかりと理解したうえで、それぞれに合った説明をするように工夫しています。

クルマの動きや性能のわずかな違いを見極められるようになると、例えば「A車とB車で段差を越える際、計測値上は同じであるにも関わらずA車の乗り心地の方がいいのはなぜか」という課題に対して、従来の計測方法だけにとらわれず、違いが発生するメカニズムを深く追究することで真因が特定できるようになります。プログラム修了後は、受講生が自らの部署でトレーニングを企画したり勉強会を開催するなど、SDAで体得したことを伝承する活動も広まってきています。

車両運動開発部
伊藤 和広

またSUBARUが参戦している「スーパー耐久1」で使用するレース車両の開発は、SDAのインストラクターが中心となり、若手従業員も多く参画しています。レースでは、クルマづくりの一連の流れが通常の量産車開発では考えられないようなスピードのなかで、「走る・曲がる・止まる」といった性能の良し悪しをより鮮明に感じとり、車両を開発しなければなりません。課題に対して担当者だけが取り組むのではなく、それぞれの専門領域から知見を結集し、課題解決に向けて積極的に意見を言い合っている様子は、正にこれからの車両開発に必要なことだと感じます。「レースという過酷な条件で」かつ「部署の垣根を越えて」1台のクルマをつくり上げることはメンバーのエンジニアとしての成長につながっており、これらは量産車における性能や品質を一層高めることにもつながっていると考えています。

*1:市販車をレース用に改造した車両など、様々な規定でつくられたレースカーがクラス分けされて競う耐久レース