第6世代「フォレスター」開発ストーリー Vol.2 デジタル技術で進化するSUBARUの新デザイン

第6世代「フォレスター」開発ストーリー Vol.2
デジタル技術で進化するSUBARUの新デザイン

記事内の日付や部署名は、取材当時の情報に基づいた記述としています

仕事は違っても、「笑顔をつくる」という想いでつながる「SUBARUびと」。 様々な部署で働く「SUBARUびと」を、仕事内容や職場の雰囲気を交えてご紹介します。今回は2025年4月に発表した第6世代の「フォレスター」のデザインに携わった中村さんと林さんに当時を振り返ってもらいました。

中村 誠さん

中村 誠(なかむら まこと)さん

2008年に入社し、コンセプトカー開発・先行開発・量産車開発などで実務経験を積んだ後、近年では第2世代SUBARU BRZ・第3世代クロストレックの外装意匠面データ制作に携わった。また、第5世代インプレッサの開発でクレイモデラーとして携わった経験を活かし、第6世代フォレスターではフォレスターらしい機能性とたくましく堂々としたデザインの両立に注力した。

林 恒太朗さん

林 恒太朗(はやし こうたろう)さん

2019年入社。大学では製品デザインを専攻。入社し、第6世代アウトバックのカメラ付きシャークフィンアンテナやグレードバッジを担当。第6世代フォレスターではホイールやルーフレールのデザインを手掛ける。量産業務のほかにもSTI NBR CHALLENGE、スーパー耐久シリーズなど、モータスポーツ関係のデザインも担当。

目次

本質的価値を最大化する
新たなデザイン開発に挑戦

林:
第6世代フォレスター*1の開発にあたり、私はルーフレールやアルミホイールといった、グレードごとに差し変わるパーツたちのデザインを担当しました。具体的には、今回の車両コンセプトに基づいて、まずそれぞれのパーツのスケッチを描いて雰囲気を固め、そのあと正面や側面のスケッチも描いて、中村さんをはじめとしたデジタルモデラーに立体化してもらうという流れでした。
中村:
私はデザイナーから平面のデザインスケッチを受け取り、それをデータに起こす部分を担いました。出来上がったデータはエンジニアと共有し、技術的な視点でのフィードバックをもらいながら、デザイナーと一緒に調整しました。

中村さん、林さん

林:
今回私たちが目指したのは、お客様に安心感を与える、たくましく堂々としたデザインです。ボディは張り出したフェンダーで走破性の高さを可視化するとともに、シンプルでクリーンな造形とすることでどんな場所にも馴染んでいくスタイリングを実現しました。より幅広く、多くのお客様に手に取っていただきやすいよう全体のイメージはニュートラルな印象は保ちつつ、アルミホイールをはじめとする足もとはSUBARUらしさやそれぞれのグレードの違いを感じていただけるデザインにしました。当時はコロナ禍での開発でしたから、私たちの仕事の進め方もこれまでとは大きく変えながら進めていきましたね。

林さん

中村:
そうですね。みんなで集まって議論するのがなかなか難しい環境でしたから、可能な限りデータ上でやりとりできるよう、今回の開発では“デジタルエンジニアリング”という手法を新たに取り入れました。これまでの開発は、デザインスケッチを元にクレイモデラーが粘土で実寸サイズのモデルをつくって検証を進め、それを測定してデータに落とし込んでいくという手順でした。デジタル技術が発達したことで、まずデジタル空間の中でデザインを立体化し、検証して、実現の見込みがあるデータをクレイモデルにするという進め方が可能になりました。これは大幅な開発期間の短縮につながりましたね。
林:
加えて今回は、従来と異なり、デザインファーストで開発をスタートしました。デジタルエンジニアリングによって、かなり早い段階から画面上で設計部隊とリアルなビジュアルを共有することが可能になったため、「いいクルマをつくる」という共通の目標に向かって意思統一を図ることができたことは、大きな成果です。

中村さん

SUBARUの安全思想を徹底し、
魅力あるデザインを実現

中村:
一方で、私はデジタル空間での立体化ということで“冷たい印象”にならないよう心がけました。やはり100%手作業で作り上げたものに比べると、データから立体化したものは、デザインの温かみが十分ではなかったり、造形的な物足りなさを感じることがあります。実際、データを元にクレイモデルを製作して陰影が分かりやすくなるよう銀色のフィルムをクレイモデルに貼って確認すると、影の入り方やハイライトの当たり方など、「ちょっと違うよね」ということが何度かありました。
林:
そこはチームで話し合いながら、意識的に柔らかさを加えていくなど、何度も調整しましたね。
中村:
また、ボンネットフードを上げたデザインと視界の良さの両立には苦労しました。一般的にはボンネットフードの高さを上げた方がSUVとして力強く見える一方、上げすぎると視界に悪影響が出ます。総合安全思想を大切にするSUBARUとしては、視界の良さは譲れない。データやVRなども使いながら視認性を確認し、みんなで細部を詰めていくことで、最終的にはまとまりあるデザインを実現できたと思います。林さんは今回、デザイナーとして企画段階からさまざまな提案をしていましたよね。

林:
そうですね。通常は企画チームが考えた企画に沿って、デザイナーがクルマの造形を決めていきます。ですが今回のフォレスターでは、各グレード間の差別化をこれまで以上に明確にしたかったため、自ら企画チームに対して「こんな世界観にしたい!」とプレゼンしました。というのも、お客様調査の結果から、北米などでは自分のライフスタイルに合ったグレードを選ぶ方が多いというのが分かっていたんです。だからこそ、そのグレードを買ってくださるお客様像を自分の中で具体化して、世界観からしっかり考えたいと思っていました。
中村:
例えば林さんが担当したアルミホイール。これはSUBARU車のアルミホイールに求められる様々な性能要件を満たしつつ、それぞれのグレードを表現する魅力的なデザインになっていますよね。

林:
ありがとうございます。何パターンもデザインを考えては、そのたびにエンジニアに何度も解析をお願いすることで、何とか性能要件とデザインを両立することができました。そこはお客様にもぜひ注目していただきたいですね。
中村:
SUVとしての力強さもありながら、乗ってみたいと思える親しみやすさも感じていただけるデザインになったと思いますので、ぜひ手に取っていただけたら嬉しいです!

「いいクルマをつくる」という共通目標に向かい、魅力のあるデザインを実現したSUBARUびと。次回はAWDシステム制御と純正アクセサリー用品の魅力に迫ります。

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