SUBARU BRZ 年次改良モデルの開発秘話【ハンドリング編】

SUBARU BRZ 年次改良モデルの開発秘話
【ハンドリング編】

記事内の日付や部署名は、取材当時の情報に基づいた記述としています

仕事は違っても、「笑顔をつくる」という想いでつながる「SUBARUびと」。様々な部署で働く「SUBARUびと」を、仕事内容や職場の雰囲気を交えてご紹介します。今回は、2024年7月に改良モデルが発表された「SUBARU BRZ」(以下、BRZ)のハンドリング開発に携わるエンジニアにインタビューしました。

畑 秀樹

畑 秀樹(はた ひでき)さん

2014年入社。大学院では機械システム工学を専攻。入社以来、一貫して操縦安定性・乗り心地性能の開発に従事し、北米向け3列SUV「アセント」の開発・空力を使った運動性能開発などに携わる。2022年より車両運動開発部 車両運動開発第二課の課長を担う。

年次改良でBRZの
「操る愉しさ」を新しい次元へ

私の所属する車両運動開発部は、SUBARU車全車種の「操縦安定性・乗り心地性能」の開発を担う部署です。クルマが滑り出すような限界域においても、SUBARUらしく安心して運転できるようなクルマを作りこむため、SDA*1メンバーを含め、SUBARU内でもトップの運転スキルを持つエンジニアが多数在籍しています。その中で私は、言ってみれば音頭取りの役目です。

*1:スバル ドライビング アカデミー=SUBARUエンジニアの運転スキルと評価能力を高める人財育成の取り組み。
https://www.subaru.co.jp/outline/about/engineer/

今回はBRZの年次改良(マイナーチェンジ)を行いましたが、年次改良はフルモデルチェンジ以上に、お乗りいただくお客様の声をダイレクトに反映させやすい点が特徴です。本格的な開発が始まるはるか前から、お客様の声を情報収集しながら課題を形成し、お客様に何をどう届けるか?を検討してきました。またBRZはトヨタ自動車さんの「GR86」との共同開発車ですので、トヨタ自動車さんからの要望も吸い上げながら開発を進めています。

兄弟車「GR86」は最大のライバル!

BRZと共同開発されたGR86はいわば「兄弟車」であると同時に、お互いがライバル同士でもあります。両車ともモータースポーツシーンで使用されることの多いクルマですが、GR86はそのキャラクター上、BRZ以上にスポーティさが強調されています。対するBRZは「雨・雪といったコンディションを問わず、安心して走れるスポーツカー」をコンセプトにしていますので、クルマの限界を引き出すような場面においては、GR86に軍配が上がる部分も否めませんでした。

エンジニアとしては「兄弟車とはいえ、負けたくない!」という気持ちが強いですから、今回の年次改良では「雨・雪といったコンディションを問わず安心して走れるスポーツカー」というBRZらしさはキープしながら、よりスポーツカーらしい走りが愉しめるような改良を施しました。

兄弟車同士で、切磋琢磨しています!(画像は改良前モデル)

兄弟車同士で、切磋琢磨しています!(画像は改良前モデル)

高い運転スキルを持ったエンジニアが、
クルマと対話しながら完成度を高める

前述の通り、私は操縦安定性≒ハンドリングを開発する立場ですので、「電動パワーステアリングのアシスト特性」と「ダンパー特性」の見直しを図りました。

電動パワーステアリングの特性を変更することで、街中でのスッキリとした軽快な操作性を確保しながらも、負荷のかかるモータースポーツのような場面においては、路面からのインフォメーションがハッキリと感じられる、スポーツカーらしいハンドリングを実現しています。

ダンパー特性を変更する上では、ドライバーが「クルマがこの後どのような動きをするか?」を予見しやすいような特性を大切にしています。これはSUBARUのクルマすべてに共通したテーマです。スポーツカーらしい乗り味といっても、じゃじゃ馬というわけではない。とはいえ、滑らないように滑らないように…と作りこんでしまうと、逆に滑る前と滑った後での挙動の差が大きくなるので、ドライバーとしては唐突感を感じてしまう。この辺りを高い次元でバランスさせることを目指しました。

滑りやすい雪道やサーキットでの高速域など、クルマの限界領域における操縦性が求められますので、高い運転スキルを持つエンジニアが、クルマと対話しながら完成度を高めていきました

SUBARUでは開発したクルマに乗って評価する専任の「テストドライバー」という職種はなく、開発段階におけるクルマの評価はすべて「エンジニア」が行っています

SUBARUでは開発したクルマに乗って評価する専任の「テストドライバー」という職種はなく、
開発段階におけるクルマの評価はすべて「エンジニア」が行っています

ワンチームでいいクルマづくりを推進

普段は操縦安定性を見る我々のチームと、パワーユニットを開発するチームは別々で開発を行うのですが、MT車専用「SPORTモード」という新機能が追加されることを受け、今回はチームの壁を超えてワンチームで取り組みました。これこそ「安心と愉しさ」の追求のために、SUBARUが目指すべき究極の姿ではないかと感じます。

スーパー耐久シリーズにおける活動もそうですが、近年のSUBARUでは、仕事内容も職場も違い、顔も名前も知らなかった人たちが一つのプロジェクトを通して知り合い、互いの知見を活かしながらクルマづくりを進める機会が増えてきています。「これってどういう風にやるの?」「次のテストまでに、ここをやってもらえないかな?」などの会話が飛び交い、現場の調整力が高まっているなと感じます。そして今回、特に驚いたのが、実務に取り組むみんなのBRZ愛が凄いこと(笑)。なんでこんなにコダわれるのか、なぜそこまで工数を割くのか。「もっといいものをお客様に届けたい」、「もっといいクルマをつくりたい」という強い思いと意識の高さには正直驚かされたのと同時に、本当に頼もしく感じました!

お客様に安心して愉しんでいただけるクルマづくりを目指し、ワンチームで開発に向き合う「SUBARUびと」。ぜひ、次回のコラムもご期待ください。

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