プロがひしめく勝負の世界に身を投じる、スーパー耐久マシンの社員ドライバー

プロがひしめく勝負の世界に身を
投じる、スーパー耐久マシンの
社員ドライバー

車両運動開発部│廣田 光一

記事内の日付や部署名は、取材当時の情報に基づいた記述としています

スーパー耐久に挑むSUBARUの技術者たち。 今回はスーパー耐久でドライバーを務める車両運動開発部の廣田 光一(ひろた こういち)さんにインタビューしました。

ドライバーとして参戦してきた廣田さんから見て、1年を通して若手エンジニアの成長はいかがでしたか?

最初の頃は、サーキットにクルマを搬出する際、私もいっしょになってクルマの下にもぐって、いろいろなところの点検・確認の作業をしていました。 やはり、みんな初めてのレースなので、何をやったらいいか…と手探りでやっていたわけです。 でも、こうして1年を終える頃には、私がマシンの確認をせずとも「じゃあ、あとはよろしくね」と任せられるレベルまで成長しました。 今では非常に頼もしいです!

廣田さん自身の進化・成長はいかがですか?

普段は量産開発のためにクルマを走らせていますが、レーシングドライバーの吉田 寿博さん・鎌田 卓麻さんからは、クルマの挙動をいかに言語化するかを勉強させてもらいました。 いままで使っていた言葉とは少し違っていて、アンダーステア*1を説明するだけでも、サーキットシーンでは普段の開発とは違う言葉選びが必要だということを学びました。

若手エンジニアたちも同様に、こうしたドライバーからのコメントを通じて着実に考え方が変わってきたと思います。 例えば一つのコーナーを例に取っても、理想的な姿勢で進入するには高速域でもしっかりと安定したコントロール性が必要で、そのためにはストレートではどうあるべきか?ブレーキングではどんな姿勢がいいのか?といったことが、繋がりとして理解できるようになってきているんです。

*1:狙うコーナリングラインの車両軌跡に対し、前輪の軌跡が外側に膨らむ「曲がりづらい」現象

なるほど、日常業務からは得られない知見を吸収できるわけですね。

マシンの軽量化に取り組んだ時、プロジェクトに関わっていない人たちからは、量産車から離れたレースカーを作っているように見えたかもしれません。 ですが、軽量化によってこれまで以上に軽快な走行が可能となったことで、ドライバーからは「キビキビして気持ちいい」というコメントをもらえたんです。 こうしたことはシミュレーションだけで実感することは難しいのですが、それは量産開発でも同様です。 つまり、軽量化するとお客様には「気持ちいい」と感じていただけるという、お客様視点での「軽量化の価値」を肌で感じられたわけです。 こうした体験が、若手にとってスーパー耐久に参戦したことの大きな収穫のひとつだと感じています。

SUBARU航空宇宙カンパニーと協力して製作した、再生カーボンを用いた軽量ボンネットフード

単なる速さを追求しただけの軽量化ではなかったということですね。

軽量化はクルマの安心感を高める一つの手段ですが、逆を言うと、重量増はクルマの運動性能を低下させ、限界を超えた先でのコントロール性に大きな影響を及ぼします。 BEV*2をはじめとする電動車は重たいバッテリーを搭載していることもあり、純粋なガソリン車に比べると車重は重たくなる傾向です。 そうしたクルマを開発する時に、軽量化のメリットを深く理解しているかどうかは大きな違いとなります。 また、軽量化ではない別の手段で、クルマの安定性・安心感を高めるにはどうすれば良いか?何をすべきか?を考えるきっかけにもなると感じています。

*2:Battery Electric Vehicle(電気自動車)
廣田 光一

廣田 光一(ひろた こういち)

1994年入社。
車両の耐久性に関する業務を担当後、97年に現 車両運動開発部へ異動。
その後は操縦安定性・乗り心地性能の作り込み一筋で現在に至る。
若手時代の同部署には、辰己 英治氏(STI NBR CHALLENGE 総監督 兼 STI車両実験部 技術顧問)や藤貫 哲郎(当社 最高技術責任者)も在籍し、現在のスバルドライビングアカデミー(以下、SDA)のコンセプトでもある「乗って、感じて、考えて、物理にする」姿勢や「礼儀」を学ぶ。
SDA創設メンバーの1人であり、現在ではSUBARUらしいクルマ作り・お客様の共感を引き出す技術の開発を実現できるエンジニアの育成に力を入れる。

「レースを通じて、現状維持は退化と同じということを実感したと思います。 日常の業務でも常に進化を求め、変化に対してどんどん積極的に挑んでいくことが必要だと改めて実感しました。 」と力強く語ってくれた廣田さんでした。 レースを通じて切磋琢磨を続けるSUBARUのエンジニアたちの挑戦、次回のコラムもぜひご期待ください。

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