考え方・方針

SUBARUは、気候変動への取り組みを最も重要な課題の一つとして認識しています。SUBARUは2050年のカーボンニュートラルを目指し、商品および工場・オフィスでのCO2の排出削減を通じて脱炭素社会の実現に貢献すべく、「長期目標」およびそのマイルストーンとして「中期目標」を策定し、目標達成に向けて取り組んでいます。

また、カーボンニュートラル実現に向けた手段として中長期的な視点ではいずれバッテリーEVが主軸になっていくと考えます。電動化を取り巻く環境が大きく変化し続け、先行きを見通すことが難しいなか、SUBARUは、バッテリーEV移行初期と位置づける2025年から2026年に向けて、規制やマーケットの動向を注視しながら、その変化に「柔軟」に対応し、ある程度方向性が見えてきた断面では一気に「拡張」していくという「柔軟性と拡張性」の観点が極めて重要であるとの認識をもって、各種取り組みを推進しています。

体制・マネジメント

昨今の事業を取り巻く環境は、非連続かつ従来にないスピードを持って変化しています。このような外部環境の大きな変化に対し、新たな組織および役員の体制下で、新体制方針に掲げる「モノづくり革新」と「価値づくり」を加速させることを主眼に、全社組織の横串機能強化と執行責任の明確化ならびに具現化していく体制とすることで、核心的重点テーマへの取り組みのスピードアップと全体最適化の実現を目指します。

自動車事業 5つのCXO(Chief X Officer)の新設

SUBARUは「モノづくり革新」「バッテリービジネス」「デジタルカー」「コネクトビジネス」そして「コスト改革」の5つの領域を「核心的重点テーマ」と位置づけ、各領域を担当する5人のCXOにより、部門を跨ぎ、部門の壁を壊し、再構築しながら、「モノづくり革新」「価値づくり」のスピードアップを図っています。

CXO(Chief X Officer) ミッション
CMzO(最高モノづくり責任者):
Chief Monozukuri Officer
開発手番、部品点数、生産工程の半減および世界最先端の「モノづくり革新」を牽引
CBBO(最高バッテリービジネス責任者):
Chief Battery Business Officer
電池の安定調達、競争力、事業性の確保など、電池事業全体の進捗推進
CDCO(最高デジタルカー責任者):
Chief Digital Car Officer
クルマのデジタル化を通じた世界最先端の「価値づくり」を牽引
CCBO(最高コネクトビジネス責任者):
Chief Connected Business Officer
主にアウトカー領域での世界最先端の「価値づくり」を牽引
CCIO(最高コスト改革責任者):
Chief Cost Innovation Officer
競争力ある原価実現のための全社統括

「モノづくり革新」と「価値づくり」に関わる組織および機能の再編と強化

SUBARUは「モノづくり革新」と「価値づくり」に関わる組織および機能の再編と強化を図るため、商品ポートフォリオ戦略機能強化を目的に経営企画本部に価値づくり推進室を新設するとともに、商品企画本部を商品事業本部に改称し、ICE系(含 ハイブリッド)に特化した商品の競争力維持、向上のための企画開発、販売後の車両の商品力向上や「減価ゼロ」企画などを推進します。

ガソリンエンジンを含む内燃機関

環境マネジメントシステムを活用した気候変動関連のガバナンス

SUBARUは、社会とSUBARUの持続的成長、および地球環境の保全に貢献することを目的とした「環境委員会」を設け、将来の社会が要求する環境水準と合致する大局的かつ中長期的な方策(目標など)を議論するとともに、それらの進捗を評価しています。
環境委員長は、取締役会が選任したサステナビリティ部門を担当する執行役員が務めます。環境委員会で行われた議論などの内容は、サステナビリティ委員会へ報告されます。また、必要に応じて、経営会議および取締役会へ付議・報告される体制を整備・運用しています。気候変動に関する課題についても当環境管理体制に組み込み、気候関連課題を含む環境リスク・機会の評価、モニタリングおよびマネジメントレビューを実施し、特に重要な案件については取締役会の審議を経て意思決定しています。生産環境小委員会、地球温暖化防止部会、国内関連企業環境小委員会、販売・サービス環境小委員会、物流環境小委員会を各々年2回実施し、各取り組みの進捗状況をモニタリングしています。

気候変動関連のガバナンス体制

ライフサイクル全体での気候変動関連のガバナンス

SUBARUは、事業活動のライフサイクル全体で排出されるCO2の削減を通じて脱炭素社会の実現に貢献するため、毎月、「製品使用」「素材部品」「輸送」「廃棄」「製造」の5つの領域の代表部署が集まるCN推進会議を開催しています。2050年のカーボンニュートラルを達成すべくCN推進会議では、各領域が協力して情報共有を行うとともに、中長期的な視点でのマスタープランの策定および各領域の排出量の推移の見える化と減らす化を行っています。SUBARUは、ライフサイクル全体でのCO2削減を目的とした組織横断的な会議体を運営し、これらの取り組みは、環境委員会にて、カーボンニュートラルのための取り組みとして全体統括されています。

認識した主なリスクと機会

SUBARUは、持続可能な事業活動を行うため、気候変動に関連するリスクと機会の認識を図っています。
現時点で認識している気候変動リスクとして、気候変動に対する取り組みが適切に進まない、あるいは異常気象による調達・生産・物流活動の停滞などが生じた場合、さらに現時点での将来予測が極めて困難な移行リスク・物理的リスクの影響および発現度により、研究開発費用などの増加、顧客満足やブランドイメージの低下による販売機会の逸失、異常気象による調達・生産・物流活動の停滞などにより、SUBARUグループの経営成績や財政状態に重要な影響を及ぼす可能性が考えられます。
また、気候変動に対する適切な取り組みにより、新たな市場の開拓や雇用の創出、資本やエネルギーの効率的な活用が期待されます。

認識した主なリスク

事業運営全般

【評判リスク】

①低炭素化・脱炭素化への取り組みが不十分な場合、SUBARUブランド価値が毀損し、人財採用や販売に悪影響を及ぼす可能性があります。また、中期・長期的な視野の投資家などからの資金調達が困難となり、資本コストが上昇する可能性があります。

【規制リスク】

②現在のパリ協定の各国目標は2°C未満の目標達成には不十分といわれており、各国がより厳格な目標へ見直した場合には、SUBARUのビジネスに重大な影響を与える可能性があります。

【急性的物理リスク】

③気候変動の顕在化にともなう各地での集中豪雨の多発による原材料供給の停滞や工場浸水による操業リスクが考えられます。

商品

【規制リスク】

①日本、米国、欧州、中国の燃費規制に合致しない場合、法令違反に基づく罰金・過料やクレジット購入など、負のインセンティブが生じ、SUBARUは追加の費用や損失を被る可能性があります。また、一定の燃費水準を満たさない場合には、商品の販売機会が制限される可能性があります。

【市場リスク】

②現時点では電動化に関する技術進歩・価格適正化の予測が難しく、将来、市場との乖離が生じることが予想されます。この市場ニーズとの乖離は過大な開発投資、顧客満足度の低下による不測の損失や販売機会の減退を招き、電動化の進行を遅らせる可能性があります。

③中長期的な視野では電動化は着実に進むものと考えており、ある段階で一気に市場への浸透が進む可能性があります。その時点で、適切な技術と商品を備えていない場合には、商品の販売機会に重要な影響を与える可能性があります。

【技術リスク】

④電動化は、調達・使用・廃棄にいたるすべての過程で、収益性を確保しつつ進めることが重要であり、SUBARU商品の上流・下流を巻き込んだ取り組みが進まない場合には、商品のライフサイクル全体でその目的を達成できない可能性があります。

【慢性的物理リスク】

⑤天然資源を使用しているタイヤ、電動化技術に使用する車載電池材料などの金属資源の調達が困難になる可能性があります。

生産段階

【規制リスク】

①化石燃料由来のエネルギーを使用し続けた場合、石油などの地政学的な要因によるもののほか、政府の炭素税や排出枠規制などの対象となり、コストが上昇する可能性があります。

【技術リスク】

②再生可能エネルギー利用が進まなかった場合、スコープ1、2排出量の削減対策が滞る可能性があります。

認識した主な機会

【市場機会】

①商品の環境対応が適切に進み、かつ、世界規模で気候変動の適応・緩和も進んだ場合、SUBARUの主力市場を維持しつつ、安心と愉しさに共感する市場の拡大が期待できる可能性があります。

②気候変動の緩和に貢献することで、SUBARUのブランド価値が上昇し、人財採用や販売に好影響を与える可能性があります。また、投資家からの資金調達が容易となり、資本コストの低減につながる可能性があります。

【エネルギー源に関する機会】

③生産段階で消費するエネルギーに関し、費用対効果にも配慮しつつ再生可能エネルギーへ移行することは、化石燃料由来のエネルギーに内在する価格変動リスクから解放され、将来のコスト上昇を未然に防げる可能性があります。

※1
リスク・機会に関しては、過去の事実や現在入手可能な情報に基づいたものであり、将来の経済の動向、SUBARUを取り巻く事業環境などの要因により、大きく異なる可能性がある。また、気候変動に適応したSUBARUの商品が貢献できる機会を表したものであり、気候変動の悪化などを期待するものではない。

シナリオ別に認識しているリスクと対応策の具体例

対応策の例として、市場において電動車の販売比率が大きく高まるシナリオ、市場での電動車の浸透が緩やかに進むシナリオなど複数のシナリオを考慮し、電動化戦略を策定しています。また、気候変動への対応が進まず自然災害の激甚化が進展するリスクを考慮し、お取引先様の水災害リスクの対応や豪雨時の浸水対策をBCP※2として進めています。

※2
Business Continuity Planの略で、事業継続計画のこと。
シナリオ例 シナリオ下で特に重視しているリスクの例 対応策
BEV化の浸透 商品 一定の燃費基準を満たさないことへの商品の販売機会の制限リスク
  • 環境規制や市場の動向を注視したBEV、ハイブリッド車、ガソリン車の生産比率を柔軟に変更できる生産体制の構築
  • 2028年末までの8車種のBEVラインアップと米国で40万台の販売
市場ニーズと電動化技術の乖離による市場リスク
自然災害の激甚化 事業運営 各地での集中豪雨の多発による原材料供給の停滞や工場浸水による操業リスク 雨水貯留槽の設置や排水能力の強化による豪雨時の浸水対策
お取引先様での有事発生時の復旧支援活動の体制の整理や水災害リスクの評価

戦略

電動化に関しては先行きを見通すことが難しい段階にあるので、規制やマーケットの動向を注視しながら、その変化に「柔軟」に対応し、ある程度方向性が見えてきた断面では一気に「拡張」していくという「柔軟性と拡張性」の観点が極めて重要との認識を持って、各種取り組みを推進しています。
中長期的な視点では、カーボンニュートラル実現に向けた手段として、いずれはバッテリーEVが主軸になっていくと見ていますが、バッテリーEV移行初期の足元2025年から2026年については、「開発」「商品」「生産」の各々、各領域における取り組みにより取り巻く環境変化への「柔軟性」を確保します。
さらに今後のバッテリーEV普及期、つまり「拡張」の局面に向けては、「モノづくり革新」「価値づくり」の成果が求められるフェーズとなります。2024年1月に稼働を開始したイノベーションハブにおいて従業員やお取引先様が垣根なく集い、開発・生産など様々な検討を行う「大部屋活動」や、他社との協業を通じて「モノづくり革新」「価値づくり」を具現化する活動を推し進めています。
これらの取り組みを通して「開発」「製造」「サプライチェーン」が高密度につながる「ひとつのSUBARU化」を進め、2028年末までに投入を見込むバッテリーEVはアライアンスの知見を活かした「自社での開発」を目指します。また「モノづくり革新」「価値づくり」を推進する過程で得た様々な知見はICE系商品の強化に対しても活用していきます。

バッテリーEVの開発

バッテリーEVの開発は、SUBARU独自やアライアンス活用によるものなど様々な選択肢を検討してきましたが、2026年末までにラインアップする4車種のバッテリーEVについては、トヨタ自動車株式会社(以下、トヨタ)との共同開発とし、両社の知見を持ち寄りながら開発を進めていくこととしています。

バッテリーEVの生産

矢島工場で生産する「共同開発のバッテリーEV」は、トヨタに対しても供給します。また、トヨタの米国工場で生産されるバッテリーEVについてもSUBARUに供給され、SUBARUにおいても米国生産のバッテリーEVをラインアップすることとなります。これらの共同開発や、相互生産、相互供給により、先行きを見通すことの難しい時代において、トヨタとともにリスクを軽減し、開発および生産領域の「柔軟性」を確保します。

HEVの商品と生産

トヨタハイブリッドシステムをベースとした水平対向エンジンを搭載したSUBARUらしい独自のHEVである「次世代e-BOXER」を「フォレスター」に加え「クロストレック」にも展開を拡大します。バッテリーEV移行初期においてHEVは極めて重要となるHEV商品の強化により、商品の「柔軟性」を確保し、お客様の選択肢を増やします。また次期「フォレスター」は、ガソリンモデル、「次世代e-BOXER」モデルともに国内工場での生産のみならず、いずれはSubaru of Indiana Automotive, Inc.での生産も開始し、日米での生産領域における「柔軟性」も確保できるように進めていきます。

2025年から2026年の生産工場ごとの車種展開

「次世代e-BOXER」において、その基幹ユニットとなるトランスアクスルについては、2024年秋、リニューアルするSUBARU北本工場にて、生産を開始します。
「次世代e-BOXER」は、先ずは国内工場の生産車両に搭載しますが、いずれは、米国の生産車両にも搭載を予定しています。また、矢島工場で生産されるバッテリーEVは、トヨタに供給する計画を踏まえ、需要に応じた生産の「柔軟性」を確保します。

開発日数半減、生産工程半減、部品点数半減を目指し、さらに工場・オフィスでのCO2排出量の削減施策を計画的に実行する

SUBARUは、開発日数半減、部品点数半減、生産工程半減を実現し、世界最先端のモノづくりを成し遂げます。現在は商品構想、設計、生産などが、それぞれ前工程の手離れを待ってリレー式に進めている業務を、モノづくり革新の中では、各領域をアジャイルに進めていくことで、モノづくりに要する時間の半減につなげます。
また、こういった取り組みを絶え間なく推進していくことで、既存領域にかかる開発日数、生産工程などの抑制を図り、先行きの見えない時代における「非連続に変化する領域」への対応力も強化していきます。
SUBARUは、開発日数半減、生産工程半減、部品点数半減を目指すとともに、さらに工場・オフィス(スコープ1,2排出量)のCO2排出量を2035年までに総量ベースで2016年度比60%削減を目指します。SUBARUは『モノづくりの工程』と『製品の構造』双方のアプローチで効率化を推進し、エネルギーの自給と効率化により、CO2排出量の削減を加速します。
SUBARUグループは、省エネルギーの施策をはじめ、CN電力の自家発電や購入、および水素・アンモニアなどのCN燃料の導入などの施策を講じ、2035年までのスコープ1,2排出量の削減施策を計画的に実行し、目標達成を目指します。

2035年までのスコープ1,2排出量の削減施策と削減実績のイメージ
※1:
日本の電力排出係数は0.25t-CO2/千kWhまで低下すると想定
2023年度の削減施策と削減実績
施策 CO2削減効果(t-CO2
再生可能エネルギーの生成(太陽光発電) 4,445
購入電力のカーボンニュートラル 51,388
高効率空調機器の導入 2,000
コジェネレーション設備の更新 3,712
ICT・IoTによる省エネルギー 500
グリーン電力・熱証書の活用 4,064
66,109

リスクマネジメント

自動車業界は100年に一度の大変革期を迎えており、グローバルに事業を展開するSUBARUグループは世界情勢の変化に素早く対応して、経営の持続性を確保し経営基盤の強靱化を図りながら、人的、社会的および経済的損失の最小化にこれまで以上に取り組んでいく必要があります。こうした環境のなかで事業活動を行っていくうえで、グループワイドでの戦略的なリスクマネジメントの推進が不可欠であり、SUBARUグループをリスクに強い体質にし、企業価値の向上を図ることが重要であると考えます。SUBARUグループを取り巻く環境が非連続かつ従来にないスピード感で推移していくなか、「新経営体制における方針」の実現をより確実に進めていくために、各本部の重要リスクに加え、外部変化や足元の環境を踏まえた経営レベルの議論を通じて策定した新リスクマップを活用するなどリスクマネジメントの一層の強化を進めています。
SUBARUは、気候変動に関連する「政策・規制」「技術」「市場」などの移行リスクに関して、各専門部門が広く情報を収集し、将来予測から不確定な気候変動リスクの認識に努めています。これらの移行リスクは、執行会議にて提案・議論され、特に重要な案件については取締役会の審議を経て意思決定しています。
また、気候変動の物理的なリスクに関わる浸水などの自然災害にともなう操業リスクに関しては、BCPの一環として、リスクマネジメント・コンプライアンス室が中心となり関連規程類の整備を進め、緊急時のSUBARUグループ全体にわたる情報を一元的に掌握するとともに、その対応を統括管理する体制を整えています。

リスクマネジメント

中長期目標(長期ビジョンとマイルストーン)

SUBARUは脱炭素社会に貢献するため、商品(スコープ3)および工場・オフィスなど(スコープ1および2)に関する長期目標(長期ビジョン)を2050年とし、それを補完する中期目標(マイルストーン)を非連続かつ急速に変化する事業環境に応じて随時見直しながら設定しています。なお、2023年に、工場・オフィスなど(スコープ1および2)に関する中期目標を「2035年度に2016年度比60%削減」、商品(スコープ3)に関する中間目標を「2030年に全販売台数の50%をBEVにすることを目指す」としました。
SUBARUは各国の燃費規制などSUBARUに関連する政策との適合に向けて検討を行っています。これらの政策動向や国際エネルギー機関などが公表している各シナリオの情報をもとに独自のシナリオを作成し、中長期の目標および達成に向けた計画の策定を行っています。

カテゴリー 時期 目標
商品
(スコープ3)
2050年 Well-to-Wheelで新車平均(走行時)のCO2排出量を、2010年比で90%以上削減
2030年代前半 生産・販売するすべてのSUBARU車に電動技術を搭載
2030年 全世界販売台数の50%をBEVにすることを目指す
工場・オフィスなど
(スコープ1,2)
2050年度 カーボンニュートラルを目指す
2035年度 2016年度比60%削減(総量ベース)

取り組み・実績

SUBARUグループの2023年度のサプライチェーン温室効果ガスの排出量(スコープ1、2、3)は39,914千t-CO2でした。スコープ3排出量の割合が98%であり、販売した商品の使用による排出量の割合が大半を占めています。SUBARUグループが直接排出するCO2(スコープ1および2)は、スコープ3も含めた全体から見るとわずかともいえます。しかし、SUBARU自らが率先して直接排出のCO2削減に取り組むことは、オールSUBARUとしてバリューチェーン全体の活動をより充実させていくことにつながるものと考えます。

  • スコープ1:企業の自社施設から直接排出される温室効果ガス
  • スコープ2:他社から供給された電気・熱・蒸気の使用にともない間接的に排出する温室効果ガス
  • スコープ3:スコープ1、2以外の間接排出で、原料調達、輸送、商品使用、廃棄過程のほか、従業員の通勤、出張などにより排出される温室効果ガス

CO2排出量(スコープ3)

カテゴリ 温室効果ガス排出量(t-CO2
2019年度 2020年度 2021年度 2022年度 2023年度
1 購入した製品・サービス 6,181,341 5,136,697 4,339,656 5,018,874 5,861,321
2 資本財 413,287 282,713 260,566 402,915 549,384
3 スコープ1、2に含まれない燃料およびエネルギー関連活動 103,772 91,851 89,627 95,352 54,958
4 輸送、配送(上流) 737,817 601,167 506,604 426,929 500,914
5 事業から出る廃棄物 32,095 26,446 24,888 28,733 8,608
6 出張 4,554 4,689 4,798 4,878 4,900
7 雇用者の通勤 13,835 14,245 14,576 14,818 14,885
8 リース資産(上流) 該当なし 該当なし 該当なし 該当なし 該当なし
9 輸送、配送、販売(下流) 6,049 3,893 4,750 4,043 3,521
10 販売した製品の加工 該当なし 該当なし 該当なし 該当なし 該当なし
11 販売した製品の使用 34,029,045 27,455,302 23,102,609 27,453,385 31,864,033.4
12 販売した製品の廃棄 582,263 484,440 413,368 485,555 577,694
13 リース資産(下流) 2,463 1,998 2,065 1,984 1,562
14 フランチャイズ 該当なし 該当なし 該当なし 該当なし 該当なし
15 投資 該当なし 該当なし 該当なし 該当なし 該当なし
※出所:
環境省・経済産業省「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン(Ver.2.3)」(2017年12月)および環境省「サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等の算定のための排出原単位データベース(Ver.3.0)」(2020年3月)、SUBARUのライフサイクルアセスメント(LCA)の算定基準によりスコープ3排出量を算定。
「1.購入した製品・サービス」、「12.販売した製品の廃棄」の算定方法を見直したため、過年度にわたり修正を行っています。

ライフサイクルアセスメント

SUBARUは、事業活動のライフサイクル全体で排出されるCO2の削減を通じて脱炭素社会の実現に貢献するため、「製品使用」「素材部品」「輸送」「廃棄」「製造」の5つの領域での担当部署を定め、毎月、各領域の関係部署の代表が集まるCN推進会議を開催しています。2050年のカーボンニュートラルを達成すべく、CN推進会議では、各領域の情報共有を行うとともに、中長期的な視点でのマスタープランの策定および各領域の排出量の推移の見える化を行っています。

LCA全体でのCO2排出量削減アプローチ

SUBARUは自動車のライフサイクル全体のCO2排出量を評価するLCAを実施しています。自動車の環境への影響を定量化し、脱炭素化に向けた自動車の開発を設計段階から積極的に行います。現行モデルでは旧モデルと比較して、「インプレッサ」で2.4%、「フォレスター」で8.7%のCO2排出量削減を達成しました。

LCA(Life Cycle Assessment:ライフサイクルアセスメント):商品やサービスの原料調達から生産、使用、廃棄・リサイクルにいたるまでの一連のライフサイクルにおける環境負荷を総合的に評価する環境影響評価手法のこと。SUBARUの評価の対象は日本仕様車としている。

商品の取り組み

2023年度のSUBARUの全世界販売台数(小売り台数ベース)における電動車の割合は7.8%、電気自動車の割合は1.5%となっています。国内生産体制の再編にともなう2020年代中盤の自社BEV生産開始、「次世代e-BOXER」の投入、2020年代後半のBEV専用ライン追加といった電動車の供給能力の強化などにより、BEV時代での収益基盤を強固にし、高い財務健全性の確保にも努めながら、「2030年に、全世界販売台数の50%をBEVにすることを目指す」という目標を掲げ、持続可能な体制で取り組んでいきます。
また、SUBARUは航空機メーカーとして、持続可能な社会の実現に向けた脱炭素化への技術開発を進めており、2024年3月にヘリコプターでの持続可能な航空燃料(SAF※1)を使用した試験フライトに成功しました。

※1
Sustainable Aviation Fuel(持続可能な航空燃料)の略称
植物や廃油などを原料として製造される航空燃料のこと。主原料となる植物は、光合成を行う際に大気中の二酸化炭素を吸収するため、吸収量と排出量とのバランスをとることができ、従来の化石由来の航空燃料よりも温室効果ガスを削減できると期待される。

電動車販売台数比率(小売り台数ベース)の実績と今後のイメージ

新車CO2排出量の削減

SUBARUは、自動車から排出されるCO2を削減するためには、ガソリンエンジン車での燃費性能向上はもちろんのこと、電動車の車種拡充、特にBEV開発と提供を着実に推し進めることが重要であると考えます。

電動車―BEV(電気自動車)

SUBARUは、きたる本格的電動化時代への布石として、自然との共生を目指すSUBARU初のグローバルBEVとなる「ソルテラ」を2022年5月より発売開始しました。トヨタと共同開発したEV専用プラットフォーム「e-スバルグローバルプラットフォーム」を採用し、SUBARUが長年培ってきたAWD技術とトヨタの持つ優れた電動化技術を活用するなど、両社がそれぞれの強みを持ち寄りながら、開発投資を効率的に活用します。この「ソルテラ」に加え、2026年末までに新たに3車種のバッテリーEVをSUVカテゴリーに投入します。うち1車種はSUBARUの矢島工場で生産し、トヨタにも提供します。従来車と同様、お客様にとってのDifferentな存在になるため、さらなる提供価値の強化を狙ったSUBARUのBEVならではの魅力を持つSUVを日本、米国・カナダ、欧州、中国などで展開していき、さらに2028年末までに4車種のBEVラインアップ追加を予定しています。
引き続きSUBARUは、実用性とお客様の嗜好を踏まえつつSUBARUらしい環境対応車を順次、市場ごとに充実させ、地球環境保護への貢献を実践していきます。

電動車―HEV(ハイブリッド車)

SUBARUはこれまで、水平対向エンジンと電動技術を組み合わせたマイルドハイブリッド「e-BOXER」搭載車の拡充、トヨタの持つHEVノウハウを活用した、SUBARUオリジナルのPHEVの発売などCO2排出量削減への取り組みを実施してきました。これらに加え、2025年に向けて、トヨタハイブリッドシステム(THS)※2の技術を取り入れた、SUBARUらしさと環境性能を高次元で両立した「次世代e-BOXER」の生産を開始します。「次世代e-BOXER」では、エンジンとモーターの動力を平行して伝えるパラレル式から、より効率のよいシリーズ・パラレル式に進化するとともに、パワーコントロールユニットをエンジンの上に搭載することで、大きな燃料タンク容量を確保、競争力のある航続距離を実現しています。この「次世代e-BOXER」は、「クロストレック」と「フォレスター」に搭載される予定です。これらの電動車の商品ラインアップ拡充を着実に進めることで、SUBARUは新車CO2排出量の削減を実現します。

※2
THS:TOYOTA Hybrid System

エンジン搭載車

従来のガソリンエンジン車へのお客様ニーズに応えることはもちろん、車種拡充が図られるHEVもガソリンエンジンと電動技術の組み合わせであり、エンジンの進化は燃費性能向上に必須です。「レヴォーグ」および「フォレスター」、「アウトバック」、「レイバック」に搭載した「1.8L BOXER直噴ターボ“DIT”※3」は、新世代BOXERエンジンとして低回転域から高いトルクを発生させるターボシステム、少ない燃料でより多くのエネルギーを生み出すリーン燃焼技術を採用、リニアトロニックの変速範囲の拡大と相まって、発進時の力強い加速や高速巡航時の燃費性能を向上し、SUBARUらしい走りと優れた環境性能を両立しています。また、SUBARUはカーボンニュートラル燃料を使用する車両でのレース参戦や「次世代グリーンCO2燃料技術研究組合」へ参画し、カーボンニュートラル時代におけるエンジンの可能性を追求し続けています。

※3
DIT:Direct Injection Turbo

TOPICS
次世代グリーンCO2燃料技術研究組合

SUBARUはENEOS株式会社、スズキ株式会社、ダイハツ工業株式会社、トヨタ自動車株式会社、豊田通商株式会社と共に、燃料を「つくる」プロセスでの効率化を研究するため、「次世代グリーンCO2燃料技術研究組合」を設立しました。現在、マツダ株式会社を加えた7社が参画し、カーボンニュートラル社会実現に向け、バイオマスの利用、および効率的な自動車用バイオエタノール燃料の製造に関する技術研究を推進しています。

TOPICS
持続可能な航空燃料(SAF)を使用したヘリコプター試験フライトを実施

2024年3月、SUBARUは所有するヘリコプターにてSAFを使用した試験フライトに成功しました。今後もSUBARUは航空機メーカーとして、持続可能な社会の実現に向けた脱炭素化への技術開発を進めていきます。

試験フライトの様子

事業所の取り組み

SUBARUは、2050年カーボンニュートラルの達成に向けて、再生可能エネルギーの利用や高効率な設備・装置への更新により、CO2排出量削減に取り組んでいます。
2023年度のスコープ1、2排出量は471,854t(マーケット基準)となり、前年度から18千t減少し、2016年度比20.9%削減となりました(2023年度のロケーション基準のスコープ1,2排出量は545,917t)。また、2023年度の再生可能エネルギーの割合はSUBARUグループ全体でエネルギー使用量の7.2%、全電力使用量の22.5%を占め、群馬製作所本工場、宇都宮製作所南工場・南第2工場、エビススバルビル、スバルアカデミーの5拠点で購入する電力はすべてカーボンニュートラルな電力となっています。
引き続き、SUBARUグループは2035年度の中期目標の達成向け、省エネルギー施策をはじめとして、カーボンニュートラル電力の自家発電や購入、水素・アンモニアなどのカーボンニュートラル燃料の導入などの施策を講じることで、スコープ1、2排出量の削減施策を計画的に実行していきます。
また、スバル興産株式会社は、群馬県および滋賀県で太陽光発電施設から発電した電力の売電事業を行っています。

CO2排出量(組織別)

CO2排出量(スコープ別)

対象範囲

SUBARU:
株式会社SUBARU
国内グループ会社:
国内連結子会社52社(連結子会社の販売特約店33社含む)
海外グループ会社:
Subaru of Indiana Automotive, Inc.、Subaru of America, Inc.、 Subaru Canada, Inc.、Subaru Research & Development, Inc.

SUBARUは温対法に基づきCO2排出量を算定しています。ただし、海外グループ会社の電力の排出係数はIEA(国際エネルギー機関)が毎年公表している直近の国ごとの全電源CO2排出原単位を使用しています。
国内グループ会社のデータを連結子会社の集計範囲とし、スコープ1、2排出量の把握率は99%(従業員数の比率ベース)です。なお、2022年度の集計データに誤りが発見されたため、修正を行いました。

エネルギー使用量

対象範囲

SUBARU:
株式会社SUBARU
国内グループ会社:
国内連結子会社52社(連結子会社の販売特約店33社含む)
海外グループ会社:
Subaru of Indiana Automotive, Inc.、Subaru of America, Inc.、 Subaru Canada, Inc.、Subaru Research & Development, Inc.

SUBARUは省エネ法に基づきエネルギー使用量(GJ)を算定しています。
なお、2022年度の集計データに誤りが発見されたため、修正を行いました。

群馬製作所

購入電力のカーボンニュートラル(本工場、大泉工場)

水力発電由来の電力のみを販売する料金プラン「アクアプレミアム」を群馬製作所本工場で購入する電力の一部に導入していましたが、2020年11月より「電源群馬水力プラン」に切り替え、全購入電力を水力発電由来の電力とし2023年度は約24,500t-CO2を削減しました。
また、2023年度の群馬製作所大泉工場の購入電力の16%にあたる21,524MWhに対して非化石証書を活用することで、8,394t-CO2を削減しました。

高効率空調機器の導入(矢島工場)

老朽化した第3ペイント工場の冷水供給システムを更新しました。これまでは都市ガスやコジェネレーション設備からの温水を熱源とする吸収式冷凍機による供給をしていましたが、2022年4月よりターボ冷凍機(電気式ヒートポンプ)の稼働を開始し、基本的には吸収式冷凍機の熱源をコジェネレーション設備からの温水のみに更新により、都市ガスの使用がなくなりました。
また、第5ペイント工場では2018年より、冷温水供給にヒートポンプを中心とした高効率の熱源システムを導入し、CO2排出量削減が図られていますが、将来稼働予定の大泉新工場においても水平展開を計画しています。

コジェネレーション設備の更新

群馬製作所の本工場、大泉工場、矢島工場ではコジェネレーション設備を導入し、エネルギーの効率的な利用を行っています。2023年度は大泉工場の設備が稼働開始より15年を迎えたため、老朽更新を行い、6月より稼働を開始しました。更新にあたっては、直近の使用エネルギー構成を考慮し、より一層省エネルギーに寄与する仕様での機種を選定しており、旧型稼働時と比較してCO2排出量を年間3,712t-CO2を削減する仕様となっています。

太陽光発電の導入

群馬製作所の本工場、大泉工場では太陽光発電設備を導入し、2023年度は約2,732t-CO2のCO2排出量削減となりました。新築建屋の屋上には太陽光発電設備を仕様段階から織り込み、順次、既存建屋や駐車場にも拡大を検討しています。
また、矢島工場では、2022年に稼働した立体駐車場および第5完成検査棟などに加え、2023年9月に第3完成検査棟に850kWの太陽光発電設備が稼働しており、矢島工場全体で591t-CO2のCO2排出量削減となりました。

航空宇宙カンパニー(宇都宮製作所・半田工場)

購入電力のカーボンニュートラル
(地産地消型の電気メニュー「とちぎふるさと電気」)

SUBARU航空宇宙カンパニー宇都宮製作所の南工場および南第2工場において、栃木県が保有する水力発電所を電源とした、全国初の地産消費型の電気メニュー「とちぎふるさと電気※1」を2018年度より導入しています。
本メニューの導入により、毎年4,000t-CO2以上のCO2排出量を削減しています。また、本メニューを通じてSUBARUが支出する電気料金の一部は、栃木県内の環境保全事業などに活用されています。

※1
栃木県企業局と東京電力エナジーパートナー株式会社が提供するメニュー。発電時にCO2を排出しない栃木県内8カ所の県営水力発電所で発電した電力を使用するため、電力使用にともなうCO2排出量をゼロにすることができる。

管理棟本館のNearly ZEB認証取得

2023年9月に稼働した航空宇宙カンパニー宇都宮製作所の管理棟本館は、建築物省エネルギー性能表示制度BELS評価において、SUBARUでは初となる「Nearly ZEB※2認証」を取得しています。また、管理棟本館の屋上に設置された太陽光発電設備によって、年間約130t-CO2の削減をしています。

※2
建物の基準一次エネルギー消費量から75%以上の削減を達成し、Zero Energy Building(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)に限りなく近しい建築物
管理棟本館

コジェネレーション設備の更新

2021年3月より、CO2排出量削減はもとより、地域社会や従業員への安全配慮を行い、系統電力の長期停電時に発電を開始できるブラックアウトスタート機能を備えた、コジェネレーションシステムを導入しました。

IoTによる工場エアーの安定供給・省エネルギー改善

ICT・IoTによるデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進を行っており、2019年11月より工場エアー分析システム化、データ解析と対策を実施しています。対策は、「エアーリークの調査・修理」「エアー供給の制限」「コンプレッサーの運転効率化」の3つを行い、年間約500t‐CO2を削減する省エネルギー効果が見込めました。

エアーリーク調査の様子

コンプレッサーの運転効率化

東京事業所

東京事業所は東京都三鷹市で事業活動を行っています。東京都環境確保条例「大規模事業所に対する温室効果ガス排出総量削減義務と排出量取引制度」の対象事業者として、「設備改善による省エネルギー推進」「省エネルギー機器の積極的な採用による省エネルギー推進」の2つの重点取り組みを設け、CO2排出量の削減に取り組んでいます。
再生可能エネルギーの活用にも取り組んでおり、自社施設の屋上に太陽光発電施設(定格出力の合計140kW)を設置しています。2023年度は199MWhを発電し、自家消費したことで37t-CO2のCO2排出量削減効果となりました。また、2019年よりグリーン電力証書制度の活用を開始し、2023年度は8,535MWhの電力(3,329t-CO2のCO2排出量相当)を購入しました。2022年9月に竣工した本館は、太陽光発電の設置、全館LED照明、遮蔽・断熱ガラスや遮熱・高断熱化の建材など省エネ技術を採用した環境に配慮した設計となっています。また施工時のアスファルト冷間工法により38.5t-CO2のCO2削減に寄与しています。既存建物の照明LED化も順次進めています。

東京事業所

オフィス

本社エビススバルビル・スバル総合研修センター

2021年度より電力の排出係数ゼロの契約メニューに切り替えるとともに、グリーン熱証書の制度を活用しています。2023年度は881t-CO2相当のCO2排出量をカーボンニュートラル化し、実質的にCO2排出ゼロのオフィスとなっています。また、2023年4月からエビススバルビル全館で使用する電力のすべてをCO2排出ゼロの電力に切り替えています。

SUBARU ACCESSORY CENTER

2020年3月に太陽光発電設備を導入し、2023年度は当該施設で発電された電力1,153MWhを利用することで、年間450t-CO2のCO2排出量を削減することができました。

スバル研究実験センター

2017年度より太陽光発電設備を導入しており、2023年度は、スバル研究実験センターの建屋で82MWhを発電し、年間32t-CO2のCO2排出量を削減することができました。

スバル研究実験センター

国内グループ会社

富士機械株式会社

2023年度は本社工場の購入電力20%、伊勢崎工場の100%にあたる計2,605MWhに対して、非化石証書を活用することで、年間で約1016t-CO2のCO2排出量を削減しました。
また大泉工場では2017年度より太陽光発電設備を導入しており、2023年度は38.5MWhを発電し、年間で約15t-CO2のCO2排出量を削減しました。

富士機械株式会社大泉工場

株式会社イチタン

CO2フリー電力を購入することで、年間3,400t-CO2のCO2排出量を削減しています。また、2023年9月から太陽光発電を導入し、自家発電を開始しました。発電量などの情報は、会社入口ロビーのモニターで稼働状態が可視化されています。九州工場は、社有車のガソリンエンジンから電動自動車への移行を進めるため、BEVである「ソルテラ」を導入し、CO2排出量の削減に努めています。

太陽光発電設備導入後の様子

スバル興産株式会社

太陽光発電施設からの電力の売電事業として、群馬県桐生市に定格出力420kWの太陽光発電設備を導入し売電する事業および滋賀県湖南市に1,470kwの太陽光発電設備を導入し、売電する事業を行っています。また、同社が所有する太田Sビルや東長岡寮新棟に太陽光発電を設置し、再生可能エネルギーの利用に努めています。
なお、スバル興産株式会社は、省エネ法に基づき、2019年度より4年連続で優良事業者(Sクラス)として認定されました。これは電気、ガス使用量の5年間平均原単位低減が1%以上の目標を達成している優良事業者に与えられる評価です。

海外グループ会社

Subaru of Indiana Automotive, Inc.

Subaru of Indiana Automotive, Inc.は生産プロセスおよびテクニカルトレーニングセンターにてCO2削減の取り組みを行っています。
生産プロセスでは、エネルギー削減を目的として、「LED照明への更新」、「AHU(エアハンドリングユニット)とMAU(メイクアップエアユニット)の空調システムに制御バルブを設置」を行いました。また、テクニカルトレーニングセンターでは、「太陽光発電の設置」、「全ての屋内の照明をLED照明に更新し、モーションセンサを導入」などの施策を行いました。

販売の取り組み

国内販売特約店

国内販売特約店でもSUBARUグループと同様に、2035年度までに2016年度比のCO2排出量▲60%の削減目標とし、カーボンニュートラルな電力購入を順次進めています。2023年度までに、電力使用量の約5割まで切り替えが進んでおり、今後さらに比率を高めていきます。

Subaru of America, Inc.

Subaru of America, Inc.の本社ビルとNational Service Training Centerは、LEED認証のなかでも標準認証よりレベルの高いシルバー認証を取得しています。本社ビルとNational Service Training Centerでは、2021年にオートメーションシステムや包括的な空調システムの導入により効率的なエネルギー使用を図っています。
また、本社ビルでは、100%再生可能エネルギー由来の電力を使用とともにLED照明への更新を行っています。また、2021年に本社ロビーでは自然光を効率的に取り入れることで、照明用の電力使用量を削減しています。

LEED(Leadership in Energy & Environmental Design)は、米国グリーンビルディング協会(USGBC:U.S. Green Building Council)が開発・運営する、環境に配慮した建物に与えられる認証制度。建築全体の企画・設計から建築施工、運営、メンテナンスにおける省エネルギーや環境負荷を評価することにより、建物の環境性能を客観的に示すことができることから、米国を中心にLEED認証の取得が拡大している。
Subaru of America, Inc.の本社ビルとトレーニングセンター

デイライトハーベスティング技術を導入し、太陽光を有効利用しているSubaru of America, Inc.の本社ビルのロビー

Subaru Canada, Inc.

カナダの販売店である「Scott Subaru」の建屋は冷暖房施設を不要とするなどエネルギー効率の高い設計となっており、パッシブハウス(省エネルギー建屋)の認定を受けました。

物流の取り組み

SUBARUでは、物流会社、販売会社などのグループ全体や他の自動車会社と協働することで、完成車や輸出部品などの輸送効率化を推進し、物流過程におけるCO2排出量の毎年1%削減に取り組んでいます。
2023年度はSUBARU内全ての物流関連部署が集結し、削減活動の紹介、その横展開による活動推進の場を設けました。また、SUBARUのサプライチェーン強化は、2050年カーボンニュートラルの実現に繋がるとし、削減活動と合わせて、CO2排出量の算出精度の向上と把握範囲の拡大を引き続き取り組んでいきます。

SUBARUの物流体制

完成車の輸送

最適な標準ルートで完成車の輸送を設定し、輸送する車種構成の変化・大型化に対して柔軟に対応するとともに、積載効率向上や、モーダルシフト※1を推進しています。また、物流協力会社にはエコドライブの推進、デジタルタコグラフ※2やドライブレコーダーの導入による運行管理、導風板等の装着による燃費向上への寄与など、環境負荷の少ない運転をお願いしています。
輸送ルートの集約化および平準化をさらに高めたことにより、2023年度のSUBARU車1台当たりの輸送時CO2排出量は、2006年度比17%減の目標に対し25.7%減となりました。今後も、さらなる削減に向けて取り組んでいきます。

※1
貨物輸送をトラック輸送から環境負荷の小さな鉄道輸送や船舶輸送に切り替えること。
※2
自動車の走行時間や走行速度などの運行記録を自動的に記録し、メモリーカードなどに保存するシステム。業務として自動車を運行する業種における運行管理システムとして導入が進められつつある。急加速・急減速、アイドリングの無駄、危険運転などを明確に「見える化」することができるため、安全運転意識の向上、燃料使用量の削減を図ることができる。

輸出部品

SUBARU車の海外生産用部品の輸送では、ハイキューブコンテナの空きスペースの活用、梱包荷姿の見直し、梱包資材の軽量化などのコンテナ充填率の改善に取り組み、2023年度の充填率は98%となりました。その他、コンテナ輸送を効率化するラウンドユース※3や、インランドコンテナデポ※4の活用、群馬地区の他社が使用した輸入コンテナの再利用の活用等々の取り組みを通じて、引き続きCO2排出量削減に向けて積極的に取り組んでいきます。

※3
輸入コンテナを空で港に戻さず輸出に転用する。これにより港からの空コンテナ輸送を削減。
※4
内陸部(インランド)にあるコンテナ貨物の集貨拠点。

部品用品

  • トヨタモビリティパーツ株式会社との共同配送推進
    複雑かつ一部の非効率な輸送体系の解消に向け、トヨタモビリティパーツ株式会社と整備用部品の共同配送を2020年度より開始しています。2023年度末時点で販売特約店12社(26店舗および一部地域の外販お取引先様)にて共同配送を実現しており、今後も他地域での共同配送化の取り組みを推進します。
    なお、共同配送に切り替えたことにより、一部特約店において、リードタイムの1日短縮や、運送費の約25%低減を実現できました。
  • 電動対応フォークリフトへの切り替え
    群馬の部品物流センターでは、LPG搭載フォークリフトから電動対応フォークリフトへの切り替えを順次進めています。災害・停電時には電動フォークリフトを蓄電池として利用できる備品も備え、非常時の通信手段の確保などにも活用していきます。

Subaru of America, Inc.

物流工程のCO2排出量を減らすために鉄道の利用を促進しています。また、アラスカの販売特約店向けの海上輸送についてもLNG活用により排出量の削減に取り組んでいます。これらの取り組みにより25%のCO2の削減、95%のNOxの削減、99%のSOxの削減を実現しています。2023年には、商品に応じて輸送関連の排出量を約50~80%削減しました。また、運送業者パートナーのLNG船舶により温室効果ガス(GHG)排出量を最大21%削減し、国際海事機関の2030年排出基準を上回る体制を整えており、サプライチェーンの持続可能性の達成に向け取り組んでいます。

調達の取り組み

お取引先様の選定や管理メカニズムに、気候関連問題を盛り込んだ行動規範を定め、オリエンテーション時に共有および徹底を図っています。
また、お取引先様にISO14001の認証取得を推奨することにより、サプライチェーンでの環境関連の事故・不具合の未然防止や、環境法令への抵触リスクの削減に努めています。
また、お取引先様に対する調達方針説明会の中で脱炭素への協力を要請しました。2024年度は削減目標をお取引先様と共有し、一体となって取り組むことを周知します。

その他の気候変動の取り組み

カーボンプライシング

排出量取引制度

東京都、埼玉県で事業活動を行っている東京事業所、北本工場、ステラタウン大宮は、東京都環境確保条例「大規模事業所に対する温室効果ガス排出総量削減義務と排出量取引制度」あるいは埼玉県の「目標設定型排出量取引制度」の対象事業者として、排出量取引制度の対応を行っています。
また、SUBARUは経済産業省が公表した「GXリーグ基本構想」に賛同しました。この賛同にともない、2024年よりGXリーグにおける排出権取引制度(GX-ETS)に参加します。

インターナルカーボンプライシング

SUBARUは2022年度よりインターナルカーボンプライシングを導入しました。各拠点での設備投資の稟議書のなかで、該当設備の導入にともなうCO2削減量を6,000円/tにて金額換算を行い、CO2削減効果を費用削減効果として計上することで、設備投資の判断に盛り込むこととしています。この手法はシャドウプライシングに分類されるもので、このインターナルカーボンプライシングの導入により、設備担当者のCO2削減の啓発につながるとともに、CO2削減効果の高い設備に対する投資が促進されることを目的としています。

外部との協働

SUBARUは気候変動について、お取引先様やお客様、業界団体などと協働することにより、対応を図っています。

トヨタとのアライアンス

SUBARUとトヨタは、SUBARUのAWD技術とトヨタの電動化技術を活用したEV専用プラットフォームおよびEV車両開発に取り組むことで合意しています。両社の持つ技術の強みを掛け合わせることで、EVならではの魅力ある商品づくりを目指しており、BEV専用プラットフォームとしてトヨタと「e-スバルグローバルプラットフォーム」を共同開発しました。

業界団体

一般社団法人日本自動車工業会(JAMA)の気候変動対策に関する委員会に、メンバーとして参加しています。また、代表取締役社長および取締役専務執行役員は、JAMA役員として機関決定に参加し、JAMAの決定はSUBARUの経営に反映しています。

TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)への賛同

SUBARUは、気候変動への取り組みは最も重要な課題の一つとして認識し、これまでも気候変動に関する情報開示を進めており、TCFDの提言に賛同しています。SUBARUのTCFDの推奨開示項目に関する開示状況は、TCFD対照表(https://www.subaru.co.jp/csr/tcfd/)をご参照ください。

TOPICS
電動化時代の新たなエンジン開発を「三社三様」で宣言

SUBARUは、トヨタ、マツダ株式会社とともに、カーボンニュートラル実現に向けて、電動化に適合する新たなエンジン開発を三社三様で宣言しました。新たなエンジンでは、モーターやバッテリーなどの電動ユニットとの最適な組み合わせを目指します。また、エンジンの小型化によるクルマのパッケージ革新に加え、多様なカーボンニュートラル燃料にも対応する事で内燃機関でのカーボンニュートラルを実現します。

製造から使用にいたる全体で、大気中へのCO2排出が実質ゼロになる燃料。H2とCO2からなる「e-fuel」や、植物などのバイオマス(生物資源)を原料とする「バイオ燃料」などがある。