TOP > 開発秘話_episode 06
「コネクティッド」が、クルマのトレンドを指し示すキーワードのひとつになっています。「クルマが外の世界とつながることで、乗る人に新しい価値を提供する仕組み」と定義されますが、SUBARUのコネクティッドビジネスを率いる高井部長は「クルマが車輪のついたスマホになるとイメージすればいいでしょう」と話します。クルマがインターネットにつながり、スマホと同じような操作でさまざまなアプリを便利に使える世界…それがコネクティッドカーの目指す姿だというのです。これからの時代、ADASや自動運転の進化とともに、ドライバーはますます安心・安全で快適な運転ができるようになり、車内で話しかけるだけで、例えば近くのカフェを案内してくれたり、ネットショッピングで買物を楽しめたり、家にいるのと同じようになるのも、そう遠い未来ではないでしょう。「そうしたニーズに、クラウドやAI、音声認識といった技術を活用して応えていく取り組みがコネクティッドなのです。でも、ネットワークやクラウドなどインフラはコモディティ化が進んでいるため、システムでは他社との差別化を図れません。では、どこにSUBARUらしさを打ち出すのか。そのキーワードは『非日常』であると、私は考えています」。
SUBARUの主力車種はAWD(4駆)のSUVで、しかも大半を占めています。ユーザーもSUBARISTと呼ばれるコアなファンを中心に、主にウィークエンドに山や海などへ遊びにいく用途で乗っている方が多数を占めています。ウィークデーの日常に乗るクルマであるより、非日常のドライブを愉しむクルマだと言えるわけです。そこで高井の所属するチームが開発したのが「SUBAROAD」。「カーナビは通常、目的地に早く着く道、高速道や国道といった走りやすい道を案内するのに対し、『いつも、決まった道を走っていたのでは面白くない。早く着かなくても、走りやすくなくてもいい。珍しいスポットに通じている抜け道とか、今までのカーナビでは出てこない隠れたコースを走ってみたい』というSUBARUオーナーならではの願いに応えるドライブアプリです。『高原から深海まで~ちょっとディープな西伊豆ドライブ』とか、静岡県の伊豆エリアから提供を始めて全国に展開していく予定で、独自の『つながる愉しみ』を生み出せたと思います」と高井。ちなみに北米では、バードウォッチングや国立公園に特化して案内するなど、SUBARU車と親和性の高いアプリが人気だそうで、非日常の観点から、次々に新しい愉しさを生み出していきます。
SUBAROADはインフォテインメントの一例ですが、テレマティクスの分野では地球上のどこからでも、どこにあるクルマでも、スマホで最速5秒(通信環境が悪いと15秒)でロック/アンロック可能という最速クラスの反応速度を達成しています。サーバー/クラウドや電話回線などの接続をミニマムに抑えるシステム構成でこれを実現しています。さらに注目いただきたいのは、当社が目標に掲げている「2030年死亡交通事故ゼロへ」の一翼を担うコネクティッドです。SUBARUではほぼ100%、アイサイトはじめADASによる「ぶつからないクルマ」を実現していますが、他車から突然ぶつけられたり、災害で土砂崩れに遭遇したり、避けようのない事故のリスクはゼロにできません。もしも、不慮の事故に巻き込まれ、身動きがとれなくなったり気を失ったりしたら…。高井のチームでは、クルマが記録している映像データやセンサが記録している衝撃データなどを瞬時にクラウドに送信。救急車を呼べばいいか、ドクターヘリを急行させるか等、AIが最適な措置を判断して適用することで、寸秒を争う救急医療の救命率を上げる「緊急通報サービス」の研究開発を進めています。「SUBARU車なら何があっても、アイサイトのステレオカメラがしっかり見つめているし、状況に応じてクルマが自動で急を知らせます。SUBARUのつながる安全は、最大限の安心につながっているのです。そしてそのうえに、つながる愉しさを掛け合わせSUBARUらしいコネクティッドの理想的な形を探求し続けていきます」。