富士重工業、新世代ボクサーエンジンを開発
~ 環境性能と走行性能を高次元で両立した新型水平対向エンジン ~
富士重工業は、1966年に発売したスバル1000に初めて搭載して以来、スバルの走りを支えてきたコア技術である水平対向エンジンに関する技術やノウハウの粋を結集した「新世代ボクサーエンジン *」を開発しました。
本エンジンは、構造を基本骨格から全面的に刷新し、軽量・コンパクト、低重心、優れた振動バランスなど水平対向レイアウトならではの強みはそのままに、約10%の燃費向上をはじめとした環境性能と全域でのスムーズな加速といった走行性能を高次元で両立するなど、新世代エンジンとして求められる基本性能を追求した新型水平対向4気筒エンジンです。
また将来、新たな環境対応を視野に、発展性を考慮した設計としました。
今回の全面刷新は、1989年発売の初代レガシィに搭載した第2世代ボクサーエンジン以来、21年ぶりとなります。
この新世代ボクサーエンジンを生産するため、群馬製作所大泉工場内に専用工場を新設し、これまでのエンジン生産のノウハウを活かした最新鋭の製造ラインを設置することで、高品質と高い生産効率を実現する生産体制を整えました。
*ボクサーエンジン | : | 水平対向エンジンの愛称 |
クランクシャフトを中心に、左右対称にピストンを配置することから、ピストンの運動の様子が、まるでボクシングの選手が繰り出すパンチのようであることから名づけられた。 |
新世代ボクサーエンジン(国内仕様) |
【新世代ボクサーエンジンの主な特長】
エンジンの基本骨格であるボア・ストロークを現行エンジンよりもロングストローク化するなど、構造を全面的に刷新することで、基本性能の高効率化を徹底的に追求した設計とし、実用域のトルクや環境性能を向上させながら、水平対向エンジンならではの伸びやかでスポーティな回転特性を実現しました。
排気量は、4気筒2,500㏄と同2,000㏄の2種類のエンジンを用意し、今後の主力エンジンと位置付けています。
- エンジンの基本骨格であるボア・ストロークを見直し、これまで車体への搭載要件から困難とされてきたロングストローク化や燃焼室のコンパクト化を実現しました。これにより高い燃焼効率を得ることができ、高い燃費性能と実用性に優れた豊かな低中速トルクを発生します。
- 吸気ポート形状最適化やポート内への隔壁設定、TGV(タンブル・ジェネレーテッド・バルブ)の採用、EGR(エキゾースト・ガス・リサーキュレーション)クーラーの採用などによって、高い燃費性能を実現しました。
- 吸・排気バルブともにAVCS(アクティブ・バルブ・コントロール・システム)を採用しました。
特に吸気側にはバルブタイミングの進・遅角両制御を可能とする中間ロック式とし、吸・排気バルブのタイミングを緻密にコントロールして、出力・燃費・排ガスといったエンジン性能を最大限に引き出すことを可能としました。 - ピストンやコンロッドをはじめとした主運動系部品の軽量化や高効率な小型オイルポンプの採用などによって、フリクションロスを約30%低減し、燃費性能と回転レスポンスを高めています。
- エンジン冷却回路をブロック側、ヘッド側に分離させ冷却効果を最適化することで、燃費性能、出力特性を高めています。
【エンジン概要※1】
※1 2,000㏄自然吸気エンジンの比較 |
【主な変更項目と効果※2】
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水平対向エンジンの優位性(ご参考)
【運動性能】
- 直列エンジンやV型エンジンに比べて、エンジン本体の全高が低く抑えられ、車両全体の重心を下げることができます。
- 軽量・コンパクトな設計かつ、左右対称のレイアウトであることから、ヨー慣性モーメントを小さくすることができます。
【低振動】
- 左右に分かれたピストンが左右対称の動きをすることで、お互いの振動を打ち消し合うことができることから、振動の少ないスムーズな回転フィーリングを実現します。またバランサーシャフトを必要としないため、エンジンの軽量化にも寄与します。
【衝突安全性】
- エンジン全高が低いため、前突時など前から強い力がかかったときに、エンジンがクルマの下側にもぐりこむことで、キャビンに侵入して乗員にダメージを与える危険性を低減できます。
- エンジン全高が低いため、エンジンフードとの空間を広く取れることから、この空間により衝撃を吸収して万が一の衝突の際に、歩行者へのダメージを低減することができます。
富士重工業は、「快適・信頼の新しい走りと地球環境の融合」というテーマのもと、商品の開発を行っています。
今回開発した新世代ボクサーエンジンは、同テーマの中で、今後のパワーユニット戦略の起点となる主力エンジンとして位置付けており、フォレスターへの搭載を皮切りに今後搭載車種を拡大していきます。