富士重工業 2000kW大型風力発電システムを開発、試作機を設置
富士重工業は、2000kW級の大型風力発電システム「SUBARU 80/2.0」を開発、茨城県神栖市波崎に試作機を設置した。試作機は2006年年頭より実証試験を開始し、近い将来の市販化を目指す。
今回開発した風力発電システムは、定格出力2000kW、ローター直径が80m、ローターの中心までの高さが62m、ブレード数3枚からなる風力発電機。可変速制御を備え、風速3m/sec以上であれば発電可能である。発電機は交流励磁型同期式で、システム開発に協力している日立製作所が製造した。
日本国内では山地や丘陵地などに風力発電システムが設置される事例が多く、吹上風や乱れた風などによる故障が発生しやすいことや、日本特有の強力な台風や強い雷に対する脆弱さがクローズアップされてきているとともに、大型化する風車の輸送や建設が困難になってきていることも課題として上げられている。このような状況に対して、富士重工業は日本の自然環境や社会的インフラに最適な日本型大型風力発電システムを開発した。
「SUBARU 80/2.0」の最大の特長は、ローターをタワーの風下に配置したダウンウインド方式である。この方式は、ローター面が吹き上げ風の方向に正対する方向になっていることで、山岳や丘陵地に多く発生する吹上風のエネルギーを最大限に利用することが可能で、現在の風車で一般的なアップウインド方式に比べ発電量を増加させることができる。台風や突風に対しても、主要構造部分への荷重が軽減され、より安全で強固なシステムとなっている。
また、日本海側に発生する非常に強い冬季雷への対策として、国際規格を超える耐雷仕様を施し、落雷による事故や故障などを大幅に減らすことを狙っている。風車制御においても、これまでの国内各地での運転ノウハウをもとに、風の乱れの影響を最小限に抑え、安定して効率の良い発電が出来る運転制御方式を開発し、本風車に適用している。
さらに、大型機の課題である輸送性を向上させるために部品の分割輸送を可能とし、従来の1000kW級風力発電システムをしのぐ輸送性を実現する。大きく重い部品を分割することによって、風力発電機の建設地までの輸送費が削減できることに加え、今まで大きさや重さが障害となり2000kW級の搬入設置が出来なかった場所への導入も可能となり、風力発電システムの一層の普及に寄与することが期待されている。
富士重工業は、航空宇宙事業で培った技術を基に「40kW風力発電システム」および新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から受託した「離島用風力発電システム(100kW)」を開発・実用化して、日本の環境に適した風力発電システムを製造販売してきた。しかし、近年の風力発電市場の主流が1000kWを越えるクラスに急速に移行している状況から、今まで培った開発技術を投入して今後の主流となる2000kW風力発電を開発したものである。