2003年4月21日
富士重工業(竹中 恭二社長)は、このほど、使用済み自動車のリサイクル率95%達成を促進するために、自動車のシュレッダーダストから有価物を効率的に分離回収する「ASR※前処理分別システム」を開発し、シュレッダー処理事業者などが自社の工場内に設置可能な低価格小規模システムとして実用化に成功した。
※自動車シュレッダーダスト:Automobile Shredder Residue
今回のシステムは、すでに同社で商品化している有機物分別処理システムの技術を応用したもので、複雑に絡みあったシュレッダーダストを二段階のほぐし機能により、重質物(ハーネスに代表される非鉄金属など)と軽質物(プラスチックなど)とに効率的に分離するもの。ほぐし工程では、水蒸気を直接噴射することでダストの洗浄と除塵効果を持たせたことを特長とする連続処理可能な前処理分別装置である。
連続投入されたシュレッダーダストは、装置によって素材ごとに分別されるため、リサイクル前処理工程の大幅な簡素化を図ることができると同時に、シュレッダーダストの約55%以上(重量比)が有価物として回収できるため、シュレッダーダストの減容化と廃棄処理コストの低減およびリサイクル率のさらなる向上が期待できる。
同システムは、富士重工業のスバル技術研究所、スバル技術本部およびエコテクノロジーカンパニーが組織を越えて共同で開発を行ったものである。また、開発にあたっては、富士重工業との協力関係にあるシュレッダーダスト事業者および関係者の協力を得て進めてきた。
富士重工業では、茨城県つくば市に設置した実証試験装置で、シュレッダーダストの分別処理試験を2002年5月より進めてきたが、このほど複雑に絡み合ったシュレッダーダスト中から非鉄金属類とプラスチック類をほぼ100%分離できるという成果が得られたことにより、実用化のめどがたったものである。
使用済み自動車から発生するシュレッダーダストは、年間60万トン以上※に及ぶ。その中にはリサイクル可能な有価物(非鉄金属、プラスチックなど)が、なお多く含まれているが、それらを安価に効率的よく分離回収することが出来る技術がこれまで無く、そのほとんどが産業廃棄物として埋立て処分あるいは熱エネルギーリサイクル設備などで溶融処理されている。しかし埋立処分費用の高騰や処分に要する輸送コストの増大にともない、シュレッダー事業者からさらなる減容化、リサイクル化につながる工場内設置可能な小規模分離回収リサイクルシステムが要望されていた。
※日本自動車工業会調べ
富士重工業は、「ASR前処理分別システム」の需要が、自動車リサイクル法の施行に向けて高まり、官民一体となった自動車リサイクルへの取り組みに貢献できるものと考え、できるだけ早期の販売開始を目指している。
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