富士重工業(田中 毅社長)は、「スバル小型風力発電システム」を開発、その試作機を同社宇都宮製作所に設置した。このシステムは、同社の航空宇宙事業本部が、長年航空機でつちかった空力・制御・材料・構造設計などのノウハウを背景に、開発を行ってきたものである。
「スバル小型風力発電システム」の試作機は、可変速制御、永久磁石式多極同期発電機など、最先端とされている技術を適用している。ブレードは3枚で、風車の中心までの高さが22m、風車の直径が15mで、風車が回転しているときの最大地上高は約30mの大きさである。定格出力は40kWで、風速2m/sec以上であれば発電可能である。風力発電システムとしては小型であり、低騒音を実現するとともに、景観構造物であることにも配慮し、都市近郊でも自然環境の中でも違和感のない魅力的な外観デザインをほどこした。
富士重工業は、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)より定格出力100kWの「離島用風力発電システムの技術開発」を受託するなど、数年前より風力発電システムの開発を進めてきたが、本システムの開発もNEDOの実用化技術開発費の助成を得て行っているものである。
売電事業を目的とした風力発電の現状は世界的に大型化の一途をたどっているが、売電事業が成立するだけの風力が確保できない地域や諸々の条件から大型機建設が困難な市町村、施設電源を必要とする民間企業、更には政府開発援助(ODA)に対しては、小型クラスの需要が見込めると、同社では判断している。「スバル小型風力発電システム」はその先鋒となるものであり、消費電力の軽減に貢献することに加え、環境に対する啓蒙活動のシンボルとしても活用できることをアピールしていく。
今後、試作機での性能試験を実施したあと、来春には市販の予定(販売価格は未定)である。将来的に海外市場への進出も視野に入れ、今後の開発の中で行う制御システムの簡素化などにより、低コストで、高い信頼性の風力発電システムの開発を目指してゆく。